無題
荒々しいのに気高くて、それでいて軽やかに去っていく姿に一撃で虜になった。
それ以来ずっと、彼女たちの音楽に救われてきた。
友人関係が崩れそうになった時、KOIKIを聴いて「やらねば」と踏ん張れた。
就職活動で行き詰まった時、長距離バスの休憩で停まったサービスエリアで爆音で猛烈リトミックを聴いてもうちょっと頑張ろうと思えた。
「知らない」のリリースが、自分のことのように嬉しかった。
この先の彼女たちの未来が楽しみで仕方がなかった。
たくさんライブに行ったわけじゃないけど、ひとりで行っても、誰かと行っても、帰り道はいつも鼻唄まじりでご機嫌な自分がいた。赤い公園のライブはいつも楽しかった。
どれだけ感謝しても足りない。彼女たちがいなかったらとっくに自分は駄目になっていただろうし、未だに俯いて生きていたとさえ思う。
理解できなかった。
一緒に住んでいた友達が去年いなくなって、自分の中のあらゆる基準や指標めいたものがすべてバラバラになった。
悲しくて寂しくて悔しくて、なにを考えても彼は戻ってこなくて、次第になにも考えたくなくなって、しばらくは頭がおかしくなっていた。何かにつけては苛立って、すぐに許せなくなって、最終的に人と話すのが怖くなった。
今も、まだちょっと怖い。
素直に生きたいと思う半面、発する言葉に責任を持ちたくなくて、過剰に気を遣ってしまって言葉がうまく出なくなってしまう時がある。
実際のところ、津野さんに対していま自分がなにを思っているのかも、なにを思うべきなのかも、よく分かっていない。
彼女からもらった音楽や言葉には感謝してもしきれない。それは絶対に変わらない。
この先一生聴き続けることも、これまでと変わらない。
彼女の痛みや苦悩が分からないことも、悲しいけれど、これまでと変わらない。分かりたくても、分からない。
のに、何もかも変わってしまった。
いま自分はなにを思っているのだろう。駅で行き交う人々を見て無性に叫び出したくなった。なんだか色んなことをぶちまけてしまいたくなった。
もう少し整理してから書こうかとも思ったが、出来なかった。堪え切れなくて、たまらなくなった。
今はただ、彼女の作った音楽への感謝と、心の安寧を祈っている。どうか安らかであってほしいと、心から願っている。
そう願わないと、やり切れなくて、あまりにも苦しかった。
ただ、ここからは私個人のエゴだけど、やっぱりまだまだここにいてほしかった。
いなくならないでほしかった。あまりに大きかった。
寂しいよ。