結局プルオーバー

二転三転します

どうしたのって聞かないの

なんとなくそうなんだろうなと思いながらも診断書に記載された「うつ病」の文字に確かに殴られて、ぐるぐると回る星たちを数え始めてから最初に出かけた場所は、彼女の実家だった。

急に連れ出してごめん、でもせっかくだし一緒に出掛けたかったからとぽつぽつと話す彼女に、実家へと向かう車内で既に救われてしまっていた。

初めて泣いてしまうかも知れないと思った。

でも泣かなかった。男の子だから。

ジェンダー論はまだまだ終わらないなと心底思う。

 

さて、山奥にある彼女の実家は私の知っているどんな場所よりも穏やかで、ゆっくりと時間が流れていて、私が最も苦手とする「ぼーっとする」事に取り組むのには最適の環境だった。

実際、何も考えずにいられる時間はあった。それはもう尊かった。

ただそれでもいつだって何かを考えてしまう、考えることをやめられないこの難儀な性分とどう向き合うべきか、やっぱり考えてしまっていた。

 

常日頃から何かを考えていて、些細な事、当たり障りのない事から馬鹿みたいに壮大な結末を提示できないか、そればかりを考えている。

 

 

誰かを楽しませたい、笑ってほしいという気持ちと、

私が人知れずこんなに奇天烈な結末を思いついた事を知ってほしい、

誰かこのとりとめもなく使い道もない脳内を盛大に認めてやってはくれないかという気持ちを常に抱えて生きている。

 

まあ正直なところ、割合で言えば3:7くらいなのだろうなと思う。

 

奇妙奇天烈なアイデアに溢れ誰も思いつかないような事が際限なく出てくるこの活力に満ち満ちた極めて創造的な脳内をさあ見てくれ!

そして胸焼けするほどの喝采を私に浴びせてくれ!

 

という、

身振り手振りと声だけは大きい舞台役者のような私が随分と前から脳内にいる。

そして彼の公演は、いつだって一人の客さえいない。

監督も演出も脚本も、すべて自分で考えている。毎度毎度手を替え品を替え前例のない捻りを加えているつもりではあるのだが、どうも代わり映えしない。どこかで見たような、誰かが言っていたようなストーリーばかりが繰り広げられている。

どつやら彼は自分の限界に気付きたくないらしい。

 

手数が少ない事を、

今の自分に魅力がない事を、

誰かの評価に縋って生きないと潰れてしまう事を、

君がくれる慰めの言葉にありもしない意図を探ってしまう自分がいる事を、

私の考えを好いてくれる君に何故そうも他人の考えに頷けるのだろうと自分を棚に上げる事を、

実はプライドが高い事を、

大した知識もないくせに誤魔化すことだけは人一倍上手い事を、

才能がない事を、

知りたくないのだろう。

 

そのくせ会場だけは大規模ときている。

大きな会場でなければ良いものは生まれないと思っている。

そして大きな会場をいつか何かのきっかけで満員に出来ると信じている。

だからずっと公演を続けている。 

無謀なドリーマーを卑しく笑いながら、どこか憧れているのだ。

無謀なドリーマーを卑しく笑いながら、どこか憧れている、そんな凡百のストーリーの主演がどんな役よりもお似合いだという事に、気付きたくないのだ。

 

ただ私はこの公演を死ぬまで続けるのだろうと思っていた。

1000回公演を成し遂げれば誰かが褒めてくれると思っていたのかも知れない。

 

誰かに認められたい、

既にこれだけの人から認められているのだ、もう十分じゃないか、

右耳と左耳から絶え間なく流れてくる囁きのボリュームをその日その時の気分によって変えながら、ゆらゆら行ったり来たりして生きていくのだと、そう思っていた。

 

ただどうやらそうもいかないらしい。

おそらくそう生きていくと、また同じ事の繰り返しのような、気がしている。

頑なに決めつけるのもよくない、よくないが、これまでの生き方を多かれ少なかれ変える必要がある。

 

どこか他人事だった私の人生を、私が主演で演じなければならないのだ。

逃げていたのかどうかは分からない。

ただやっと気づくことが出来た。私以外に私を全うできる人間はいないのだ。

 

私以外私じゃないの、

そう歌うバンドに、何を当たり前の事を言ってるんだと笑う君たちはきっともう分かっているのだろう。

ただ時間と労力を割かねばそんな事にすら気づけない人間もいるのだ。

 

非効率だと笑うのはよしてくれ、ただ効率だけを追い求める人生はどうも向いていないみたいなのだ。

 

誰に対しての宣言なのかは分からない。

そもそもいつからこれほどの熱量を持ってしまったのかも分からない。

大体からして、彼女に感謝しているような文を書こうという気持ちでブログを開いた筈だった。

自分のことばかりで情けなくなる。

 

クリープハイプが私は本当に好きだ。彼らの音楽はいつも違う味がする。

 

また言いたい事を忘れてしまった。見返して加筆・修正する事はできるのに、毎度ありのままでいってしまおうという所がある。だから散文になってしまうのだが、私の思考整理法なのでこれまた仕方がない。

 

 

 

ああそうだ。

 

 

 

 

 

今日は目覚ましなしで起きる事が出来た。