結局プルオーバー

二転三転します

星野源「アイデア」

言わずと知れた超名曲、星野源「アイデア」。

https://www.youtube.com/watch?v=RlUb2F-zLxw&feature=share

私がああだこうだ言える余地もない程に、至る所で議論がなされている傑作であるが、やはり傑作に旬などない。いつだってこの曲の話がしたい。今更と冷や水を浴びせるのはナンセンスだし、2018年ベストトラックは絶対にこの曲が良い。

 

「SUN」「恋」で完全に世間のエンターテイメントを更新した星野源

ここにきてさらにもうひとつギアをあげて、というかギアを変えて、このスピードだから観れる景色もあるんだよと世間に囁きかけてくれるような、愛おしさを感じずにはいられない温かい曲をまたしても生み出した。最高だ。胸にずっと秘めて独り占めしていたいのに、誰かに話したくて、自慢したくて堪らない、最高の恋人のような楽曲だと思っている。

 

さて、そうして改めてMVを見ていると、ふと気になるシーンがあった。

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この1サビのド頭の部分で、セットを移動させるスタッフの足が写り込んでいる。

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本当に大したことじゃないんだけど、これって編集で確実に気づくポイントだと思う。

とはいえこの為にわざわざ撮り直すのも手間だし、そもそもセットの特性上足が写り込む可能性がある事は構成が決まった段階で分かっていたと思う。

それでもここをそのまま残して使った理由は、今回のMVで随所に見られた撮影スタジオのありのままの風景や制作工程の裏側を細部までしっかりと残したかったという事なのかな。実際、一つの作品が生まれるまでにどれだけの人間の大小様々なアイデアが結集しているか感じ取る事が出来るすばらしいMVになっている。

きっと私が気が付かないだけで、あえてそのままで残している部分がまだまだたくさんあるのだろう。もしそんな意図で残しているのだとしたら、緻密さというか繊細さにただただ驚嘆するばかりだ。

 

 

 

というか、これだけ話してきて逆のことを言うのは大変心苦しいのだが、極端な話、意図なんて無くてもいいのだ。

 

作品がリリースされ、どんな形や経緯であれ世間に注目されて、議論が紛糾していくにつれて、微細な点からスルスルと壮大な真意に辿り着く事は往々にしてある。

と思えば、完全な受け手の深読み・思い違いで作者の意図とはまるで違う考察をぶち上げる事もまた、ある。悪意と謀略に満ち満ちたどこかの陰謀論のような荒唐無稽な考察は良くないが、個人の主観や潜在意識が無意識的に生み出してしまった筋違いの考察はその人にとっては非常に価値のあるものだと思う。

 

みんな何かに期待をしているのかも知れない。

作品と全く関係のない私たちの世界で、ふつふつと生じる疑問や違和感に解答を出すヒントを、私たちは絶えずどこかで求めているのではないだろうか。

 

これって何なんだろう、と不意に生じた疑問や違和感は、日々の暮らしに流されそうになりながらも、しつこく踏ん張り留まっている。

しかしながらそうして出来た疑問や違和感の山々を放置しておくと、やがて連なり峰となり、いつしか景色として消化され、元からありましたアルプスとして脳内で変換されていく。それがおそらく価値観山脈や偏見渓谷となり、その人の景色を完成させてしまうのではないだろうか。

 

星野源の「アイデア」しかり、名曲や傑作はこうした日々の疑問や違和感と向き合うチャンスやヒントをくれる。

こんな山、元から無かったと気づかせてくれる。

私ってこういう人間だったよな、私が感じてた違和感はこれだったんだ、そうした日々の小さな気付きから、考える力は養われていくと思う。

 

事実、私は今日写り込んだスタッフの足からこれだけの気づきを得る事が出来た。

普段から考える事をやめられない私だが、こうした利点があるからこの難儀な性格に愛想を尽かす事が出来ずにいる。

仕事を休んでから、なんとか自分を変える方法はないかと探していたが、少し見方を変えてみてもいいかも知れない。

このままの私に少し変化を加えれば、別に根本から変えずともよりよい私へと変貌を遂げられるかも知れない。

挑戦してみるいい機会だ。

 

 

ああ。

 

本当は、「これこそが本当のアイデアなのかも知れない」みたいな綺麗なゴールを決めたかった。

 

ダサいかな。

ダサいのがかっこいい時もあると思うから何とも難しいが、これはこれでいいのかなと思う。思うことにした。

 

うん。

 

星野源、彼はやっぱり最高だ。

 

 

 

 

いや、これも十分ダサいかな。まあ、いいだろう。偽りないし。